
1.プロローグ
むかしむかしあるところに、町で一番美しい少女ハイムがいました。
彼女の瞳は星のように輝き、笑顔は周囲を包み込む温かさを持っていました。
しかし、時が過ぎ、ある日突然、彼女の耳元に奇妙なものが生えていた。それは、誰もが神話や伝説に登場する魔物や邪悪な存在を連想するような形をした異形の「角」でした。
「悪魔だ」「魔女だ」「呪いだ」と、誰かが低い声でつぶやきました。
その言葉を皮切りに
街の人々の目は恐れに満ち、彼女を避けるように一斉に遠ざかりました。
それはまるで、人々と彼女の違いをより一層明白にするための線引きのようでした。
街の人々の目に映るのは、もうかつての美しい少女ではなく、恐ろしい怪物だったのでした。
彼女は耐えきれず、足を速めて町を後にしました。
ハイムは逃げるように走り続け、気づけば森の中にたどり着く。
ここなら誰にも見られず、恐れられることもないと思いました。
しかし、森の静けさは彼女をよりいっそう孤独にし、次第に心の中で「自分」という存在を見失っていきました。
街の人々の恐怖も、森の中の孤立も、彼女には逃げ場を与えませんでした。
どこにいても、彼女は「異質な存在」として、ただ孤独に沈んでいきましたとさ。
-故事-
海姆是一个因后天长出的角而感到自卑的女孩。
由于角的缘故,她曾遭受欺凌,甚至一次试图将角扯下。
她隐居在森林中时,却被鲁姆发现并收留。如今,她与鲁姆一起生活在他的宅邸里。似乎过得很舒适,并对鲁姆心怀感激。
2.子羊と悪魔
ハイムがいつものように孤独な森で過ごしていたある日、
彼女は一人の男と出会いました。彼の名はロウム。
彼は風変わりな装いをしていて、何より――頭には堂々とした角がありました。
それを隠そうともせず、むしろ誇らしげに見せていたのです。
ハイムの心は驚きとともに、大きく揺れました。
「この人も……私と同じ」
その出会いは、彼女の人生の小さな転機となりました。
初めて「自分と似た誰か」がこの世界に存在すると思えたのです。
彼が自分を見て微笑み、そして二人に当たり前のように存在する角を気にしないでいてくれることに、ハイムは心の中で「救われた」と感じました。
彼の優しい言葉、そしてその存在が、ハイムにとっては彼の言葉は、
迷える子羊にとっての導きのようでした。
ロウムのそばにいるうちに、ハイムは少しずつ、自分の角を恥じなくなりました。
それはまるで、長く凍っていた湖に陽が射したような、柔らかであたたかい変化でした。
けれども真実は、いつも静かに背後から忍び寄るものです。
ロウムの角は、本物ではありませんでした。
それは飾り――仮面の一部。
造られた異質さ、演じられた親しさに過ぎなかったのです。
ハイムは、その違和感に薄々気づいていたのかもしれません。
けれども見て見ぬふりをしました。
彼女は信じたいものを、信じたかったのです。
・・・・
――――ロウムは非常に悪戯好きな人物でした。
彼の悪戯には「自分の行動が周囲にどのような影響を与えるのか」を観察し、
楽しむという心理が根底にあり、
その「影響力の大きさ」に比例して満足を得ていました。
彼がハイムに近づいたのも、彼女の角というコンプレックスに興味を持ったからでした。
ロウムは、彼女がどれほど自分の心を変えていくか、その変化を楽しんでいただけで、
彼女の傷も、弱さも、角さえも――彼にとってはただの興味の対象だったのです。
けれどもハイムは、そのことに気づこうとしませんでした。
むしろ、ロウムの中に「救い」を見ていたのです。
それが、たとえ偽物の救済であったとしても。
ハイムにとって、ロウムとの出会いは救いだったのでしょうか。
それとも彼女は、ロウムの巧妙な欺瞞の中に、ただ身を委ねていただけだったのでしょうか?
もしかすると、ほんの少しだけ――その両方だったのかもしれません。
そしてきっと今も、どこかで彼女は問い続けているでしょう。
“自分の角”とは、呪いなのか、それとも贈り物なのか――と。